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その1





 時は四年前、春の気配近付く緑葉の月。



 この日、カドアン魔法学校の校庭では、二年生の進級実技試験が行われていた。
 三角帽に麻のローブ姿の学生達は、この日の為に魔道書を読み漁り、暗記し、必死に練習を重ねてきた。この試験をパスすれば晴れて最上級生となり、教室の中だけではなく、実際の現場で腕を磨く事が出来る。



 一年生で黒魔法か白魔法を基礎科目として習得し、二年生ではより上位の知識を要求され、三年生では実力を養ってようやく、魔道士として認められる。魔道士を志す者には避けて通れない道だ。

 この厳しい魔法学の名門校で二年間を過ごした一人一人が、今日、己の名が呼ばれる時が来るのを、拳を握り締めてジッと待っていた。




 その生徒の列の中に、ムジカ=シェーンベルクの姿もあった。
 当時14歳、少年と呼ぶには周囲と比べるとやや大人びており、それでも青年と呼ぶにはまだ早い様な顔付き。今は特徴となっているそばかすが、この頃は一つ二つ、出始めたばかりだった。



 彼もまた、この日の為に寝る間も惜しんで勉学に励んだ者の一人。入学当初から、張り出される名前はン・モゥ族との混成クラスでも成績上位者トップ2から下がった事が無く、今回の進級試験でも知識量を試す筆記試験では満点の成績を修めていた。








 魔力の方も申し分なく、今度の実技試験もパス出来る実力も、自信もあった―――――









 あったのだが・・・ムジカは自分の番が後二人まで近付いてきてようやく、重大な失敗に気付く。







(眼鏡・・・!!)




 黒魔法専攻の生徒に課された試験の内容は、ファイガ等の最上級黒魔法を舞台の上に置かれた的に当てるというもの。シンプルな様に思えるが、呪文詠唱の速さから、魔法の威力、そして発動位置の正確さに至るまで評価の対象とされる。

 ムジカにとって、前の二者は全く問題ない。問題は、後者だった。
 彼は裸眼で歩くと壁にぶつかってしまう程のド近眼なのだ。




 その自分の生命線ともいえる眼鏡を、彼は寮に置き忘れてしまったのである。無論小さな的など、まともに見える筈もない。緊張していたせいだろうか、部屋から校庭に来るまでの間、普段と違うぼやけた視界に、彼は一切気付かなかった。




「ムジカ、ムジカ=シェーンベルク!!」



 長い髭を垂らしたン・モゥ族の試験監督が、焦りで何も聞こえていない生徒の名を何度も呼ぶ。
 長いと感じていた筈の順番待ちが、眼鏡の不在に気付いた途端に早く回ってきた様に思えた。



 ・・・戻る事は出来ない。



 腹を括って前に出るムジカ、一字一句正確に唱えられたのはサンダガの呪文、足元に巻き起こる予兆の渦、上空に集まる白い電光の固まり、騒めく会場、そして、轟音と共に空を切り裂いた太く眩しい光の矢―――――――――



















「と、いう訳でムジカ君。」
「はい。」

 数日後、ムジカは内装の豪華な三年生の寮で行われている進級パーティではなく、職員室に居た。



「君は筆記試験は満点だったが、実技の方は・・・ね。」
「・・・はい。」
「いや、私はあのサンダガの威力には感銘を受けたよ。ヒュムであそこまで出すのは中々難しいだろう。しかし、その・・・何だ、的が教頭だった辺りがね。」

「・・・申し訳ありませんでした。」

「いやいや、あの後すぐに君がケアルラをしてくれたお陰で大事には至らなかった様だし、正直私も給料の話で教頭には・・・いや、今のは忘れてくれ。それと、今からそんな顔をしないでくれ。これからの事が言いにくい。

 ・・・とにかく、だ。試験の内容としては、」






 額を押さえるン・モゥの教授。


「0点だ。」
「・・・・・・。」
「筆記と実技、足して二で割った点数が65以上で合格、そして君は筆記が100で実技が0だ。この意味、分かるね?」






「・・・部屋の魔道書を整理してきます。」

 あまり気を落とさんようにな、という教授に有難うございましたと答え、廊下に出る。
 ムジカの留年は学年、さらには上下学年にも知れ渡っていた。



 まさかあの人が?という囁き声や視線から逃げる様にして寮に帰る。

 部屋の戸を閉め、ひとつ息をついた。



「・・・。」
「クポ、ムジカ今帰ったクポ?」



 部屋を見渡せば、一年間生活を共に過ごした同級生が、最後の荷物を纏めている所だった。



「あ、棚はそのままで大丈夫ですよ、後は・・・私がやりますから。」
「クポポ、ムジカ・・・。」


 かける声を探している友に、笑って首を振ると、彼は荷物の中からごそごそと何かを取り出した。


「モグが読んでいた魔獣図鑑クポ、勉強の合間に読むと面白いクポ!・・・頑張るクポ。」




 手渡されたのは、モーグリサイズの小さな図鑑。ムジカは、目頭が熱くなってくるのを感じた。




「有難う・・・ございます。」
「ございますは良いクポ、かたっくるしークポ!」


 いつでも会いに来るクポ、待っているクポ!!と小さな友が去り、二人部屋の半分がポッカリと空いた部屋の寝台で。








 ムジカは一人泣いた。
 魔法学校に入学してから彼が初めて味わった、挫折だった。






















 それからの数日間を、彼はその部屋で過ごした。
 学校はとうに休みに入っていたが、家に帰る気にはなれなかった。多少ばかり生真面目な性格が、このまま帰る訳にはいかないと告げていたのだ。





 部屋だけではない。気持ちの整理もつき、もうすぐ新学期になろうという朝。



「すみません、開けて下さい・・・っているんだよね?開けてくれないかなぁ。」


 静かに、しかし、しつこく戸を叩く音でムジカは目覚めた。





 寮に留まっている生徒も普通なら、まだ寝ている時間である。こんなに朝早くに忍ぶ様にして訪ねてくるのは一体誰だろうか。




 枕元の眼鏡を手に取り、部屋の明かりを付けて戸を開ける。







「お早う、御免ねこんな時間に。」

 こっそり来るつもりだったんだけど、人が居るとは思わなくて、と微笑む相手を見てムジカは絶句する。






 そこに立っていたのは綺麗な顔立ちの女の子だった。







「六号室、ってここだったよね?僕今日からこの部屋に泊まるんだ。あ、ひょっとして君がルームメイトかな?」

 宜しくね、と言いながらも、遠慮無く踏み込んでくる。前を通過された時、仄かに花の香りが漂ってきたが、それが何の花であったかは思い出せなかった。
 ただ、相手が机やベッドを整えているのを見つめるだけのムジカ。

 が。





「うーん、じゃあまだ少し時間あるし・・・僕も寝ようかな。」


 彼女のこの一言にハッとする。

 真面目な学生だが、ムジカは年頃を迎えた男子である。女の子が自分の横で、しかも二人部屋でとくれば、不健全な思いが頭をかすめるのもごく自然の摂理だ。




「あの・・・」
「ん?何?」


 ようやく口を開けた事で気持ちが少し落ち着いてくる。首を傾げる相手に、ムジカは彼女への疑問点を切り出した。

「ここは男子寮ですよ。」







 シーツを整えていた手が、ピタリと止まった。

「それで?」
「え・・・。」


 てっきり「あ、失礼しました!」となるとばかり思っていたのを、静かに切り返され、ムジカは口籠もる。




「あああ、あの、そのー・・・女子寮は階段を降りて右に・・・」
「え?」

 ムジカの声を遮るかの様に、満面の笑みを湛えて振り返る女子生徒。




「いや、だからえーと・・・部屋を間違えているのではないかと。ここ、男子寮なんです。」
「・・・ねぇ。」


 彼女はつかつかとムジカに近寄り、いきなり手をとった。


「二人でお風呂入りに行かない?この時間だから空いているだろうし。」



 言って、その整った顔をムジカの方へ近付ける。先の花の香が、より強く香ってきて、彼は頭がクラクラするのと同時に、鼓動が早くなるのを感じた。


「二人きりだったら、僕の事、色々教えてあげるよ。ね、悪くないでしょ?」


 これ以上無い程優しく甘い声が、耳元でそっと囁く。




「・・・え、あのちょっと・・・。」

 思考が吹っ飛ぶんではなかろうかという誘いの言葉に、いけません、ななな、何言ってるんですか!?と首を振ったが、彼女はクスッと笑うだけで聞き入れる様子は無い。




「本人が良いって言っているんだから、遠慮しなくて良いよ。」
「そういう問題では・・・って、ちょっと待って下さい!」





 女子生徒はそのまま、何の戸惑いも無く、早足で男子寮浴室へと向かった。

 いくら朝早いとはいえ、誰かが既に入っている可能性は十分ある。いくら本人が気にしていないとしても、問題の有り過ぎる行動だ。





 必死で止めに追い掛ける形で、ムジカは脱衣所に踏み込んだが、彼女はその目の前で何の躊躇もなく服を脱ぎ始める。


「・・・っ!!」


 慌てて後ろを向いたその背後から、なぁんだ、つれないなぁ、と言う可愛らしい声と、わざとらしく小さなため息が聞こえた。







「・・・。」

 暫らくして、人が浴室へと入っていく音がした。擦れ違いざま、誰かが出てきたらしい。「うぉっ・・・。」と驚いた様な声も聞こえた。


「はぁー。」


 いわんこっちゃない、と息をつくと、おい、ムジカじゃないか、誰か待っているのか?と声がかかった。振り返れば、今年から先輩になる同級生の姿。風呂から上がってきたのは彼らしい。



「待っているというか、なんというか・・・。」
「ひょっとして、その・・・新しいルームメイトか?」



 ちょっと気遣わしげな声。



「と、本人は仰っているんですけどね。」
「なんだ、部屋が同じなら一緒に入れば良いじゃないか。」
「入れる訳ないじゃないですか!」



 無理言わないで下さい!女の子ですよ!?と叫んだ後に―――――変な沈黙が降りた。
 更衣室だけではない、心なしか浴室も静まり返っている様に思える。




「・・・いや、まぁ俺も最初は女かと思ってドキッとしたんだけどよ。」


 照れ隠しに笑う同期。


「・・・え?」

 どういう意味かを尋ねる間も無く、じゃあ俺二度寝するから。頑張れよ!と言われ、一人残された。




 すると、まるで機会を伺っていたかの様に

「ねぇ、早くおいでよ。貸し切り状態だよ。」



浴室から声がした。








(まさか・・・。)


 意を決して、その戸に手をかけるムジカ。



 戸を開けると、大浴場の湯気が更衣室へと広がった。
 その、もうもうと湯気の漂う部屋に、人影が一つ。



 他に誰もいないのに、贅沢にも泡風呂にする魔法装置を使ったらしく、浴槽からは様々な色の泡が溢れていた。先生に見つかれば、ミストの無駄遣いだと叱られるかも知れないが、ここまで堂々と使うとなれば、逆に大した度胸の持ち主かも知れない。





 その浴槽の淵に腰掛けていたのは、水に濡らさない様にする為だろうか、白く細い指先で、長い髪を結い上げ―――――



「ね?だから、遠慮しなくて良いって言ったのに。」


 ―――――優しくこちらに微笑む、腰にタオルを巻いた美しい―――――





「ほら、“男同士”、裸の付き合いってやつ。一年間共同生活なんだし、水入らずで悪くないでしょ?」

「す、すみませんでした!」
「ふふ、分かってくれれば別に良いんだ。」



 ―――――寮は間違っていなかったらしい。



 自分の勘違いを平謝りするムジカ。相手は機嫌良く笑っている。




「で、誤解が解けたばかりで悪いんだけど、早く支度して、背中を流して貰えるかな?」






 ―――――ここまで手間を掛けさせたんだから、そのくらいのサービスはして貰っても良いよね。

 ―――――はい。





 正直な所、手間を掛けさせられたのはどちらだか分からなかったが、ムジカは反論する元気も無かった。






 ―――――で、申し遅れたけど僕はドメニコ。名字は・・・部屋で教えるよ。ファーストネームで呼んで貰えれば良いかな。君は?

 ―――――ムジカ?ああ、君があのサンダガ打ったんだ。僕、教室から見てたんだよ。

 ―――――うーん、そんなに卑下する事無いのに。そりゃあ、済んだ事はどうしようもないけど。そうだ、明日から僕に魔法学教えてよ、良い先生見つけられたかも!




 ―――――肩の傷?・・・ああ、ちょっと驚かせたかな。昔魔獣に引っ掛かれたのが残っちゃってさ。

 ―――――あ、いや謝らなくて良いのに、気にしてないから。

 ―――――うん、見た目大きいけど、傷口はもう塞がっているから平気平気、洗っちゃって。




 この時、ムジカは自分が何を話したのかはあまり記憶していない。
 ただ、背中を流させられながら交わした会話に、気分が少しずつ明るくなっていったのは今も覚えている。







 これがムジカにとっては忘れられない、ドメニコとの出会いとなった。








***** ***** ***** ***** *****



 ムジカとドメニコの魔法学生時代の話です。前半シリアス、後半はギャグで。
 カドアン魔法学校はTAに実在する学校ですが、試験内容などの設定はかなり勝手に決めました(

 前々から書こうと思っていたのですが、どうもドメニコが絡む話はエ○くなります^^;
 あ、一応ここは健全サイトですよ、はい(



 ドメニコのセリフに嘘は無いのですが、彼はムジカが自分を女性と思っているのに気付いた時点で、わざとそう振舞った様です。彼なりの悪戯といった所でしょうか。ムジカはまんまと引っかかり、遊ばれています(笑)。

 卒業後に彼らが再会する話は、本編の方で触れる予定ですノノ

 
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