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FFTA及びFFTA-2の汎用マイユニットの為の二次創作サイト。 タイトルクリックでTOPへ。
 

 
~a Blast of Wind~

 





 それはクランの一行が、冬の寒さを避ける為、シリル中央部の宿へと身を移していた時の話である。





「トンちゃん、しりませんか?」

 バザーを歩いていた一人の男が、服を引っ張られる感覚に下を見ると、幼いヴィエラの少女がこちらを見上げていた。

「トンちゃんってのは何だい、ペットかね?」

 尋ねれば、んーん、と首を横に振る。

「トンちゃんはね、しろくておおきいの。あとね、くまさんなの。」

 男の中に、白熊に良く似たモンスターの姿が浮かんできた。

「じゃあモンスターバンクに行くと居るかも知れんなぁ。」

 少女が、目を輝かせた。

「もんすたーばんく、ぽりいったことあるの。トンちゃん、そこにいるの?」
「ああ、かも知れんな。」
「お じ さ ん、ありがとーご ざ い ますっ!」





 丁寧に頭を下げると、ぽてぽてと走って行った。

 一人で大丈夫だろうかと見送りながら考えていると、そこに「すみません」と声がかかった。
 ・・・今日はやたらと呼び止められる日だ。

 次に駆け寄ってきたのは、全身赤い服に身を包んだ金髪の少年だった。格好を見る限り、青魔道士の様だ。急いで走って来たらしく、息を切らしている。

「垂れ耳の、小さい、ヴィエラ、の、女の子見ませんでしたか?」

 ちょっと苦しそうだ。

「ああ、その子ならたった今モンスターバンクの方に行ったよ。」

 少年が男の指さす方向を見ると、白い髪の小さな影が人混みに紛れ込んでいく。

「有難うございます!!」

 言うが早いか、少年は慌てて追いかけて行く。
 男は唖然としてその様子を見ていたが、

「まぁ、チビでも二人なら大丈夫だろう。」

と、納得した様子で買い物へと戻って行った。













「ポーリーヌ!!待って、待ってよ!!」
「にゅ?」

 ポーリーヌの丸い瞳に、こちらを必死で追いかけてくる少年の姿が映った。

「ぽりわかったよ!おっかけっこだよ!!」
「ちょ、ちがっ!!」

 何を勘違いしたのか、嬉しそうに走りだそうとするポーリーヌの手を握って止める。

「およ?みはえる?」

 そのままぐったりと座り込んだミハエルの背中を「りばーす?」と言いながら擦るポーリーヌ。
 ・・・ちょっと違う気がする。




「もう、急に走ったりしちゃダメだよ!いーい?」

 立ちあがって怒ると、やや物怖じしたのか丸い瞳をまん丸にしてウンウンと頷いた。
 握られている手をギュっと握り返したのは、彼女なりの反省の表し方の様だ。

「それで・・・ベントンさんの場所は分かったの?」

 そろそろ戻らないと、きっと心配しているよ、とミハエル。







 実は二人、ベントンと一緒にバザーに行っていたのだが、ポーリーヌが何を見つけたか、先ほどの様に突然走り出してしまったのである。
 それに気付いたミハエルとベントンは慌てて追いかけたのだが、このバザーの人混みである。人の足の間を潜り抜ける様にして何とかポーリーヌに追いついたものの、今度はミハエル自身がベントンからすっかり逸れてしまった。

「トンちゃんはね、もんすたーばんくにいるんだって。さっきのおじさんがおしえてくれたの。」

 ああ、さっきの人かとミハエルは頷く。

「じゃあ、行ってみようか。」

 もう離れちゃだめだよ、としっかり少女の手を握って、ミハエルはシリル郊外のモンスターバンクへと歩き出した。



















「ただの風邪か。」

 大事じゃなくて良かったよと、一人の竜騎士が左手に持った薬の包みを見る。
 声は若い女性のもので、バンガ族には珍しく伸びた背筋に、細身の手足でスラリとした体型をしている。同じく長めで細い尾を含め、リザードマンに近い印象を受ける。竜騎士の例に漏れず竜の頭を模した兜を付けている為、顔は分からない。

「お大事にして下さい。」

 黄色い衣服を纏ったン・モゥ族の老人に、いや、急に押しかけてすまなかったねと笑いかける。

「このままじゃ、仕事に支障をきたしてしまうからさ。」
「なんのなんの。私の生業ですから。どうぞお気使いなく。いつでもいらして下さいませ。」

 この様な粗末な小屋でも宜しければ、いつでも調合致しますよ、という老人の耳に、ははっ、そうかい、と、兜の中で笑った声が小さく響く。

「じゃ、これからも有り難く寄らせてもらうよ。」
「どうぞ、ご贔屓に。」

 深く頭を下げた老人に軽く手を挙げて応えると、竜騎士は小屋を立ち去った。







「やれやれ、ここは相変わらず蒸し暑いね。」

 人通りの少なさを確認すると、竜の兜の口を開き下半分を下す。その中に、バンガ族とのそれとは異なり、ヒュムに良く似た薄桃色の唇と顎が見えた。
 本当は上半分も全部取ってしまいたいのだが、それが出来ない自分に苦笑する。


「全く、この歳になってまだ人目を気にしているとは・・・」
「モルボルだよ―!!!」

「ん?」

 何かと思って顧みれば、ヴィエラの少女がヒュムの少年の手を引き千切らんばかりの勢いで、モルボルの柵に駆け寄っていく所だった。

 ヴィエラがヒュムの人里に・・・時代は変わるものだ。パランザは、目を細めて二人の方を見た。
 後から考えれば、人を―――特にヴィエラを―――避けていた自分が何故?と不思議に思える事なのだが、竜騎士の足はこの時二人の方へと歩み出していた。何となく、声をかけてみたくなったのだ。
 
 




「小さいの、モルボルが好きとは変わっているね。」
「にゅ?」
 
 少女と、それにつられた少年の視線が、空いた兜の隙間から騎士の瞳を捉えた。ふわっと笑った少女とは対照的に、少年は騎士の顔を見た瞬間から目を離せなくなったようで、ボーッとしている。

「ぽり大きくなったら、もるぼるの。もるぼるかわいいンダよ?」
 
その言葉を喜んだのか、柵の傍に居たモルボルがフシャーッと息を3人に吹きかけた。これがかなりの激臭で、少年はむせ返り、騎士自身もやや涙目になる。リボンを付けている少女だけが何とも無いようで、モルボルに向かって手を振っている。
 
「ゴホッゴホッ!!・・・逞しい事だ。お嬢ちゃん、ポリって言うのか。」
「うん、そうなの。おねえちゃん、ヴィエラさんなの。ぽりとおそろいだね!!」
 

「・・・そうか、やはり見抜いたな。」
 
ヒュムのそれに近い、褐色の肌をした自分の顔を見た大抵の者は、ヒュムとバンガの混血だろうと言う。
 だが、ヴィエラ族はすぐに片一方の親がヴィエラである事を見抜き、嫌なものを見たとばかりに目を反らす。



 そしてこの少女もまた、ヴィエラの血が入っている事を一発で見抜いてしまった。やはり同族の血には敏感なのだろう。
 しかし、その後がいつもと違った。
 
 


「おねえちゃん、きしさんなんだ。トンちゃんといっしょだね!!」
 
 ね!ミハエル!おっきいよろいきてるのー!!と後ろでぼんやりしていた少年に言う。あ、うん、と何とも焦点の定まっていない瞳は未だ騎士の顔を見ていた。心なしか、両の頬が赤い。
 
 


「・・・・・・ポリは、私に何も言わないのだな。」
「にゅ?いいこ、いいこ?それともりばーす?」

 いや、良い子良い子して貰えたら確かに嬉しいかも知れないがな、と少女の頭をぽんぽんっと叩いた。ポーリーヌが弾けるように笑う。

「私はパランザ。ポリの言う通り、竜騎士をしている。後ろの子は大丈夫かい?ぼーっとしている様だが?」
 
 あ、いえ大丈夫です、という少年とパランザを交互に見て、「ミハエルだよ!」とポーリーヌが教えてくれた。

「風邪を引くといけないな・・・。二人とも、誰かと一緒じゃないのかい?」

 子供達の顔が、「あっ!」という表情に変わった。




「僕達はベント『トンちゃんさがしにきたんだよ!!この中にいるって。』・・・。」
 
 ミハエルの努力も虚しく・・・主導権は既にポーリーヌにあった。


「トンちゃん?」
「しろくておおきいの。くまさんなの。」
「うーん、私が見た限りではそういう魔獣は居なかった気がするが・・・。」
「あ、いえ。魔獣じゃなくて人探しなんです。」
 
 ミハエルがちょっと申し訳なさそうに言った。
 おや、という顔のパランザ。
 
「ポリ、ポリが私の事を探していたら、何て人に聞くかい?」
「パラさがしているっていうヨ!!」
「どんな奴だって言われたら?」



「うにゅー・・・」

 両手で頭を抱えて色んな方向に傾けているポーリーヌ。
 
「きいろくて、おおきいの。どらごんさんみたいっていう。」
「・・・じゃあ、ミハエルだったら?」
「あかくて、ちいさくて、でもぽりよりおおきくて、あたまにはねがついてるのって。」


『・・・・・・。』


 それでは、誰に聞いてもモンスターバンクという答えになるだろうに。崩れ落ちるミハエルに、災難だったね、と苦笑するパランザ。その後ろで、「さいなん?」と首を傾げているのは、事をややこしくした張本人である。

「どこで逸れた?街中かい?」
「はい、そうです。」

 やれやれ、仕方ないなと竜騎士の兜が左右に揺れた。

「本当はまだ本調子じゃあないんだけどねぇ。チビ二人置いておく訳にもいかないし・・・来な、お二人さん。」

 颯爽と歩き出す竜騎士に、顔を見合わせた子供達。「早く来ないと放っておくよ。」との声に慌てて駈け出して行った。
 
 
 









「ちょっと、下がっておいで。」

 ぼむちゃんだよ!、ぽりぷりんにごはんあげるの!!等と、頻繁に立ち止まりそうになるポーリーヌの手を引き引き、自分よりも一歩がずっと大きい彼女に必死でついていったミハエルだったが、その顔の前に突然パランザの大きな手のひらが飛び出してきて、危うく激突しそうになった。

 それが気がつけば金属製の大きな小屋の前に居る。パランザがガコンっと固い鉄の杭を外して、戸を開くと、

 ブオッフッ!!!

 黄金色の巨体が目に飛び込んできた。
 その傍らに歩み寄って振り返るパランザ。

「タンガロアだ。私の相棒で、幼馴染。これでもまだ子供の方さ。」
「・・・っ!?」
「ほよー・・・」

 おやおや、さすがに驚いたかな?とちょっと楽しそうな騎士の横には、高さだけでも大人二人分はありそうな黄金の飛竜―――サンダードレイクの姿があった。
 グググと子供二人の前にその長い首を伸ばしていくと、フウーーーと温かく、やや生臭い息を吹きかける。

「・・・うぐっ!!」

 モルボルと言い、ドラゴンと言い、魔獣の口臭ばかり嗅がされる日である。おっきいよー!!とはしゃぐポリに対し、ミハエルは少し泣きそうだ。



「このこ、バザーでとんでるのみたの。ぽり、おいかけてきたんダよ!」

 おやおや、とパランザは首を傾げた。

「じゃあ君達は私とタンガロアを追いかけてきて迷ったのか。ならばなおさら、その騎士を探さなければなるまい。」

 クエスチョンマークを浮かべる二人に、パランザは私にも責任があるってこった、と彼らの頭をポンッと軽く叩いた。
 


「さ、挨拶が済んだ所で行こうか。タンガロア、頼んだよ。」

 グォウ!と応える竜の背に、パランザは両腕でミハエルとポーリーヌを担いで前に乗せ、長い鎖付きの帯で自身の腰と二人を結びしっかりと腰に巻き付けた。

「風で体を冷やすといけない、しっかり温めておいで。」

 獣の毛皮か何かだろうか。竜騎士に軽く巻いて貰った柔らかくてフワフワとしたその厚い布地に、ミハエルはポーリーヌと一緒に包まった。こういう事は子供心を刺激する。毛皮の中でもそもそと動き、時々バフッとワザと布を煽ってみたり、キャッキャッと楽しげな二人は、ドレイクが首をもたげ、後ろに転げそうになると、またはしゃいだ。

「それじゃあ、行くよ!!」
 



 子供達の興奮は、3人を乗せた黄金の身体が地を蹴って浮かび上がった瞬間、最高潮に達した。耳の良いパランザにしてみれば、それはもはや悲鳴と言っても相違無い。

 ―――耳がつんざけてしまうよ・・・。
 
 
 
 
 
 

















 ―――人通りも殆ど無くなった、夕暮れ。大きな時計のある塔と、噴水のある広場にて。



「全く、どこへ行ったものだか。」

 片腕を腰に当て、ふうっと息をつく青魔道士の横で、ここには居ないみたいですねと眼鏡を拭き、かけ直すヒュムの幻術士。その足元では甲冑で武装したモーグリが先程から、遠い上空をずっと睨んでいた。三人共にミハエル、ポーリーヌと同じクランに属する青年、ドメニコとムジカ、そしてリネである。

 ちなみに彼らを含め、“ちまき”のクランメンバーが休憩している所へベントンが半ば泣き出しそうな様子で飛び込んできたのは、今から一時間以上も前の話である。他の事なら実に短い時間であるが、迷子の探索時間と考えれば話は別だ。

「ま、今に始まった事じゃないしね。ポーリーヌの失踪は。」

 しかし、ミハエルまで居なくなっちゃうなんて。これは後で“おしおき”が必要かなぁ~と綺麗な顔に不穏な笑みを浮かべるドメニコの横で、彼の弟の為に顔面で十字を切って祈りを捧げそうになったムジカである。無論、心の中で、であるが。

「ははは・・・今回はちょっと苦戦させられますね。一旦集合場所まで戻って立て直しましょうか。」
「そうだね。同じ所何回も探してもしょうがないし。」

 人攫いやモンスターが相手だったら、ちょっと一大事だしねとサラリというドメニコに、悪い冗談はよして下さいよ、とムジカ。
 すると、さっきから黙って空を見ていたリネが、ひょいとその太い眉を動かした。そのまま、ひたすら眉根を寄せて目を凝らしている。


「リネ、どうかしましたか?」

 ドメニコも「ん?」と上空を見やる。ムジカも一緒に見上げては見るものの、度の強いレンズ越しには、まだ曲がった雲しか映らない。





「・・・・・・ぃさまー!リネー!!」
「むじかー、すごいンダよー!!」






 ・・・遠くから声が聞こえたと思ったら、リネが両腕を広げ後ずさりし、二人を守る様にずいずいっと後方に押し込み始めた。

「え?何、何でしょうか?」
「・・・っ?!ムジカ、下がって。」

 リネの次に状況に気付いたドメニコが、おろおろしている友の腕を掴んで、やや強引に下がらせる。
 それを確認したリネが、顔を伏せ、片膝をついた―――刹那。

 ヴァオン!ヴァオン!と、大きな布で空気を叩く様な音と共に、前方から突風が吹いた。






 砂埃が舞い散る中、帽子を軽く押さえて前を見やるドメニコの目に、曲刀の様な鋭い爪の足が映る。よろけそうになったムジカはドメニコが咄嗟に出した腕に支えられた。リネはそのままの姿勢で動かない。彼の長い耳とマントが風に揺らされても目を閉じたまま傅いていた。

 コオオオオオオオッ!!!

 太い管の中を風が通り抜けていく様な、そんな声が聞こえた。




「これは・・・っ!!」

 三人の目前には、夕日の中に燦然と、赤橙に身を輝かせるサンダードレイクが立っていた。





「ミハエル、ポーリーヌ!!」

 ドレイクの背から下りてきた竜騎士に抱えられた子供達を見て、ドメニコが駆け寄った。ムジカもそちらに行きたかったのだが、

「あ・・・あの・・・。」

 クウーウ?

 彼の何処か、おそらく眼鏡に映る丸い自分に興味を持ったか、竜が長い首を傾げながらぐうんと伸ばし、ムジカの目前までその鼻先を近付けてしまっているので、動くに動けない状況である。









「ぽりね、ぽりね、おそらとんだの!」

 ドメニコの服を引っ張って楽しげなポーリーヌ。ミハエルと言えば、跪いていたリネをぐいぐいっと抱きしめながら、やや不安げに兄の顔を見ていた。




「あんたが、トンちゃんとか言う奴かい?」

 竜騎士がドレイクの身体を摩りながら尋ねた。

「いえ、トンちゃんは・・・ベントンは僕の従者の事です。」

 彼は僕の弟なんです、とミハエルの方を見て微笑むドメニコ。その笑顔にちょっと黒いものを感じとって、ミハエルが竦み上がった。




「そうかい。チビさん達が空で知った顔だと言うもんだからね。揃いで色違いの服着ているからそうじゃあないかと思ったが、どうやら、どっかのお坊ちゃんみたいだな。手荒な運び方してしまってすまない。」
「いえ、手荒な事には慣れていますので。」

 ね、ミハエル~、と楽しそうなドメニコとは対照的に、ますます縮み上がっているミハエルを見て、パランザは頬を掻く素振りを見せた。







 と。


 ブオオオオオッフっ!!!!!!









 彼らの傍らで轟音がした。

「あれ。ムジカどうしたの、それ。」
「・・・どうしたもこうしたも無いですよー・・・。」

 見れば、頭から水の様なものを被ってグショグショになったムジカ。ドレイクが濡れた鼻を啜りながら首を引きあげていく。

「はは、すまん。タンガロアは今風邪気味なんだ。」

 ムジカの身に起こった事が他人事に感じられないミハエルは、何か痛みを堪えている様な表情で、竜のくしゃみを被ったムジカを見ていた。




「治療の為にバンクに連れて来たんだが、そこでチビさん達を見つけてね。」

 お嬢ちゃんがタンガロアを追ってきてしまったみたいで、とパランザは言った。

「兄さんや、君の弟君は一生懸命お嬢ちゃんの世話を焼いていたみたいだよ。今日の事はそれに免じて許してあげとくんな。」

 驚いてパランザを見るミハエルに軽くウインクして返してやれば、再びその頬を赤らめ、慌てて下を向いてしまった。主の様子を見ていたリネが、ぼそっと「レモンの味」と不可解な事を呟く。しかもどこか懐かしそうである。

「そこまで言うなら・・・」

 仕方ないか。ドメニコの声に、ミハエルはホッと胸を撫で下ろした。





「ほら、そこのひょろっとしたの。」

 ドレイクの風邪がうつる事ぁ無いと思うが、念の為、帰ったらしっかり体洗っとくれよ、と言うパランザに「分かりました。あはははは・・・」と力無く笑ってムジカは応えた。















「それじゃ、嬢ちゃん、坊ちゃん。お別れだ。」

 タンガロアの背に跨るパランザの、その足元まで走り寄っていくポーリーヌを「危ないよ」と後ろから抱えてミハエルが引き止めた。
 何時の間にやら、”お兄ちゃん”の表情になっている。静かに様子を見ていたドメニコだが、浮かべる笑顔は柔らかいものだった。

「またのせてほしいダよー!!」
「・・・僕も。あの、今度お菓子食べに来て下さい!!」

 竜に跨り、手綱を左手に、長い槍を右手に持ったその様は、子供目に見ても誇り高く、”勇壮”という言葉そのものだった。




「喜んで。まぁ、まずはコイツの風邪が治ってからだな。もう迷子になるんじゃないよ!」
「うん!ばいばい、パラ、タンちゃん!!」
「さようなら、お元気で!!」



 両腕一杯に手を振る子供達と、軽く会釈する青年達に見送られ、竜騎士と相棒は飛び立った。
 地上の街が、みるみる遠のいていく。

「こんどはみんなでのろーねーーー!!!」

 ポーリーヌの声と―――初めて自分を受け入れてくれたヴィエラの、少女の声と共に。












 


 






「怪我ならぬ、風邪の光明って奴か?タンガロア。」

 夕日に染まる雲海の上を、滑る様にして飛んでいく飛竜。雲の露に濡れて光る背を、そっと撫でる。




 冷たい風が身に染みても―――それでも、パランザの心は暖かかった。











 

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 小説初パランザ、初ミハエル、初リネ。何気に初登場多いっす(笑)。
 パランザ姉さんは、ミハエルの初恋の人。
 
 
 
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ようこそ
人目のお客様。

ごゆるりと。
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