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~It's my Belief~ 




 







 それはまだ雪深い空冬の日の、空が半分ほど闇に染まり始めた夕方。




 白い息を吐きながら、赤い衣裳に身を包んだヒュムが一人、街灯が灯りだした道を歩いていた。街灯とはいえ、古ぼけて光の点滅しているそれは名ばかりでほとんど頼りにならず、実際に彼が歩いているのは暗い夕日が差す林のじゃり道だ。それも今は深々と積もった雪に覆われ、どこが道の端かも定かではない。

 彼は今、小高い山の上に居た。振り返って遠くを望めば、ちらほらと黄色く光り出した街が見える。



 突然、踏み出そうとした右足が雪に捕まって抜けなくなり、重心の移動先を失った結果、彼はバランスを崩してボフッと顔から地面に倒れこんだ。被っていた青魔特有の―――――それでいて真紅の羽付き帽子は数センチ先に脱げ落ち、雪に散った金髪が水を含んで、起き上がった彼の顔にベタリと貼りついた。

「ふぇ・・・もうやだ・・・。」

 今にも泣きだしそうな声は、まだ声変わりしていない少年のもの。






 脛まで雪に埋めながら歩いていたのは、ミハエル・リノ・ヴィクトール。歳は二桁になったばかり。最近、兄に憧れて同じクランに入ったものの、自己の世間知らずっぷりで苦労している全身「紅の青魔道士」だ。
 その自慢の赤のローブは、雪に擦られて下から水分を含み、彼のズボンや靴と同じように、黒く重くなりつつあった。




 だが、彼が泣きたい理由は寒さや惨めさだけに止まらない。

「どこへ行けば良いんだよぅ・・・。」

 クエストの内容は、尋ね人の依頼だった。渡されたのは捜して欲しい人物の名と住所が書かれた一通の手紙で、地図は無い。それでも住所が分かっているなら辿りつけるだろう、とワイリー達が推薦してくれたのだ。
 最も、チェルニーだけは、自分が行く訳でもないのに最後まで、戦闘クエストが良いと言い張っていた。理由を聞けば「俺はそれが一番楽しいと思うから」。

 暫しの沈黙の後、ミハエルは戦闘経験が無いからと他のメンバーに却下されたが、今この悲惨な状況を考えれば、どちらを推薦して貰ってもきっと「後悔した」というのがミハエルの結論だった。それならば、一瞬で敗ける事が分かっている戦闘クエストの方が遥かに、遥かに遥かに遥かにっ!!ましだった・・・。

 というのも―――――引き受けた時には仕事を任された嬉しさから忘れていた事だが―――――彼には住所を見ながら一人で何処かへ行った経験が無い。
 いつもは従者で親友のリネが導いてくれるのに任せていれば良いが、今回は彼が別のクエストへ行っている為、頼れる者は誰もいないのだ・・・。

 ミハエルは計画、行動、責任の全てが、濡れて冷たくなってきた肩に重くのしかかっている様に感じた。





「六番地、って此処かなぁ?」

 周囲に誰も居なくとも、何か口に出さなければ不安でいられなかった。日はとうに暮れ、街灯が照らし出した明るい円錐状の光のすぐ外では、曇って見えない星の代わりに雪がちらつき始めたのが見える。

「右に折れてみようか。」

 再び、独り言。言って来た道を振り返ったのは、これで良いのだろうかという気持ちと、薄暗い闇の中から何かが迫ってくるのではないか、という脅迫めいた怖れからだ。

「行こう。」

 あんまり遅くなると、本当に追い剥ぎやモンスターが出るかも知れない。ミハエルは重くなっていた足に力を込め、先を急いだ。













 ―――――雪が、いよいよ激しく降り始めた。

 焦りと、不安から雪にめげずに歩き続けていたミハエルだったが、白い小悪魔達は容赦無く彼の視界を遮った。キンキンに冷えてきた耳を少しでも暖めようと、帽子を深く被り、襟を立て、その上から両手で押さえる。

 と。








「・・・っ!!」

 螺旋を巻かれた人形の如く、ただ次を踏み出す事しか受け付けなくなった足が、濡れた土の上に乗った瞬間、上に積もった雪が土ごと崩れ、体躯の小さいミハエルは体の左側からバランスを失い、道の横へと滑り落ちた。
 すぐに立ち上がろうとしたが、うう、といううめき声と共に再び座り込んでしまった―――左足首がジンと熱い。服の上から触れると、手に少し血が付いている。

 本当に幼い頃から外で転げ回って生傷の絶えない子供と異なり、貴族の子としてそれなりの育ち方をしたミハエルにとって、血は見慣れない物だ。幸いそれが溢れるように流れ出る程の傷ではなかったにせよ、少年は自らの手相の筋に入り込み、それをくっきりと浮かび上がらせている“朱”を見た瞬間、心臓の底が止まってしまうのではないかと思う程、サァッと額が冷えたのを感じた。
 落ちる際に、何か尖った固い石の様なものに足が当たった感触はしたが、どうやらそれで引っ掻いてしまったらしい。

 怪我の経験の少なさは、処置の経験の少なさでもある。どうにかしなくては、と気ばかりが焦るものの、為す術も無い。
 だが幸か不幸か、この冬空にこの雪である。刺激しないようにさえすれば、冷えてジンジンする感覚に紛れて痛みは分からない。右足に体重をかけながら、近くにあった石碑を掴み、ミハエルはゆっくりと立ち上がった。








 ・・・石碑?







「わぁっ!?」

 彼が石碑か何かだと思っていたのは、十字に彫られた誰かの墓碑だったのだ。周囲を見渡せば、他にも様々な形の墓標が見える。つい最近添えられた様な花が置いてあるものもあれば、一つ、只々待ち人を待ち続けるかの様に、寂しげに立つ古い墓碑もあった。
 冷え込んだ空気の中、薄らと雪を被り、静かに佇む様子はとても厳かに見えたが、それだけに、自分が捕まったせいで雪が無くなっている部分が暗く目立つ。ひどく罰当たりな事をしてしまった様に思えた。

「はわ・・・御免なさい!」

 十字架に向かって謝るミハエル。




 ―――すると、その墓碑の後ろから、ヌッと巨大な影が現れた。
 ランプの光が、その影の頭部を下から照らし出し、ミハエルがその中に見たのは―――――








―――――ズラリと並んだ鋭い歯と、やや曇った眼球だった。












「ふぃ・・・やぁぁああっ!!ゴーストだぁ!・・・・・・っ!!」

 走って逃げ出そうとしたが、体の左から再び突き抜ける様な激痛が走り抜けていく。
 影は、グラリと倒れかかった少年の首をむんずと掴み上げると、ランプを挟み込む様にして彼と自分の顔をこれでもかという程近付けてきた。


「あ・・・・・・。」

 ミハエルは片方の頬が熱い程ランプに晒されて初めて、相手の顔をしっかりと見た。現れたのは、ゴーストはなく、一人のバンガ族だったのだ。

「なんだ、墓荒らしかと思えば・・・ふん、私の墓地にゴーストだと?そんなに勤まらん仕事なんかしていたら、当に止めておるわ。」

 全く、この愚か者がと、所々擦れた、どこか息苦しく、絞り出す様な乾いた罵り声で、ヒュムの子であるミハエルにもこのバンガの男が相当な歳である事が理解出来た。

「申し訳ありませんでした。」

 摘み上げられたまましょげかえる少年に、老人は深々とため息をついた。自分への手紙を預かった子供が何時まで待っても来ず、痺れを切らして楽には動かぬ体に鞭打ち迎えに行ってみれば、自分よりもずっと若い―――身軽な筈のその子供が、まぁものの見事に足を滑らせ転げ落ちた所である。

 その様を見た時は肝を冷やすと同時に、何と鈍い事かと嘆かわしい様な思いになったが、その手にしっかりと握られていた手紙を見て心が暖まるのを感じた。この雪の最中、大事に抱えてきたのだろう、体中濡らしているのに、その手紙だけは湿気を吸ってしんなりしてはいるものの、染み一つ無かった。

 もたついた様子ではあるが、礼儀も責任感も持っている。





「そいつぁ、手を貸してくれた墓の主に言うんだな。」

 少年をそっと地面に降ろし、ほら、としゃがんで背中を向けるが、一向に身を預けて来る気配が無い。振り返ってみれば戸惑ったように目を白黒させているので、「それとも、ここで一晩過ごすか?」と言えば、ようやく負ぶさってきた。おずおずと首に回された両腕を片手で掴み、もう片方で少年の体を下から支えて背負い込む。

 そういえば、と老人は数日前に己を尋ねて来た人物の事を思い出した。

 ―――ちょっと手間はかかると思いますが、彼の為なので。宜しくお願いしますね―――

(温室育ち、か。爺に重荷を押しつけるな、全く。)

 おんぶのされ方も知らなかったのだ。怪我を負っても、あたふたするだけなのも頷ける。







「坊主は、クエスト中か。手紙の配達だろう。」
「あ・・・どうしてそれを・・・」
「さっき宛名に私の名前が見えたんでな。」

 え?という声と共に、もぞっと、背中で少年が身じろぎしたのを感じた。

「スペングラーだ。スペングラー・オルグレン。お前は?」
「ミハエル・・・ミハエル・リノ・ヴィクトールです。」
「聖書の大天使か・・・良い名だ。」

 言って、スペングラーはミハエルを背負い直した。

「家で処置してやる、今夜は泊まっていけ。大人でもこの吹雪、命を落としかねん。」

 仕事は達成した事にしてやる、という言葉に安心したのか、背中の重みがほんの少しずつ増していった。
 二つの影は、そのまま小さな木造の小屋の中へと消えていく。






 その小屋から少し離れた所で、ミハエルを支えたあの十字架や、その周囲の墓碑に、白く柔らかく反射した小屋の灯が、ちらちらと笑うように揺れていた。

 こうして、少年は冬山の吹雪の中、一人の孤独な老人と出会い―――数年、数十年後も忘れられぬ数日間を送る事になった。











***** ***** ***** ***** *****


 2年以上も放置されていた下書きを、ようやく引っ張り出して来ました((
 舞台が冬だから、冬に公開じゃないと色々と格好がつかないのです。で、1年、2年と延長されまして(笑)。1月になって、そこそこ寒くなってきたし丁度良いかなぁ~と。

 ちなみに、このお話の雰囲気は「If We Hold On Together」という曲がモチーフです。この小説書いている間はリピートでCDかけっぱです(笑)。

 ずっと昔にあった子供向け恐竜アニメの主題歌なのですけれども、どことなく、暖かく、それでいて励まされる様な歌で小さい頃よく聞いていました。いきなりお母ちゃん竜と死に別れるんですよ、主人公(;ω;)オヨヨ







 さてさて。

 多くの短編は続きが未定ですが、この短編はもう少しだけ、続きます。
 少年と、墓守と、+α(?)の心の交流のお話。






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