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Ⅲ.白百合は誰が為に(1)


***** ***** ***** ***** *****


「おい待てこら!」

 またか、とエメットは呆れかえってテーブルの方を見やった。視線の先で、ワイリーとチェルニーが、飽きもせずにエンゲージしている・・・町中は困るぞ、とエメットが言った通りに、場所と状況を変えて。

(そういうつもりで言ったんじゃないんだが。)

 小さくついたため息も、両脇の強烈さに、本人以外の誰の鼓膜に届くまでもなく掻き消されてしまった。


「その手羽先は俺んだって言ってんだろが!」
「置いてあるから要らねーんじゃねえのか?」
「最後の楽しみとしてとっといたんだろが・・・っておい言ってる先から口に入れんな!!」
「うっへーは、ふっはもんはひはろ・・・」

 交戦は席の真ん中にエメットを挟み、三人席の端と端、そしてエメットの目の前で、食べ物の奪い合いとして行われている。既に食事を終え、新聞を読んでいる彼がこの二人の争い自体に巻き込まれる事は無かったが、時々、両者の腕に頭が当たったり、視界が遮られたりと二次災害はしっかり被っていた。


「ワイリー貴様、いい加減にしろ。」
「待て、なんで俺一人に言うんだよ。」
「何だべ、賑やかダすなァ~。」


 ついにエメットもキれ、あわや第二次大戦が勃発か、という所で消火班が現れた。ベントンだ。


「ベントン聞いてくれよ~、こいつら揃いも揃って、も、ひでーんだって。」

 笑顔のまま首を傾げるベントンに、ワイリーがしかめ面で愚痴をこぼした。

「まタ喧嘩したのけ?」
「違う。俺は静かにして欲しいだけだ。」

 エメットが、恨みがましそうに肘鉄という流れ弾を食らった後頭部をさすっている。

「だったらまずチェルニーに言えって。まぁ、喧嘩って程じゃねーよ。ねーけど、」
「あ、これも貰っていいか?」

 言った先から、手が伸びる。

「おい、チェルニーお前人の話を聞きやがれ。」
「つぇるにぃ、なンならオラも今カら飯さおねげェすっから、お前さンも好きなン頼ンだらラ良が。」
「本当か!?」

 チェルニーの手が引っ込んだ隙に、ワイリーが素早く”獲物”を口に放り込んだのを、エメットは横目で見ていた。
 全く、闘士が来てから、随分と生存競争の激しくなった食卓である。前々から朝の早かった狩人は、その分彼らの食事よりも先に済ます事で、生き延びていた。マッケンローやカロリーヌは、逆に遅くなった様だ。
 …まるで、山だ。山そのものだ。頂点にチェルニーが居て、朝の遅さを直せば良いのに直らない、直す気も無いワイリーが、そこの覇権をかけて毎朝ここで争っていて、エメットやマッケンローはそれを尻目に細々と生きていて。そしてベントンが…

「んむんむんむ…、おま、こいつの腹は際限無く物を吸い込むんだぞ。」
「・・・すまんな、ベントン。」
「なンて事ネェよぉ。食べたい時、腹一杯食うンが一番だべ?ナァ。」

気の毒だが、そういう事なのだ。ああ、野生の世界は厳しいなベントン。いつから、ここは山になったのだ。そうして、エメットの思考は冒頭へと戻っていく。
 昼は各自、夜はバイキングなのが、信心深い騎士に神が与えた、食卓における唯一の慈悲なのかも知れない。最も、本人はまるで気にしていないが、あれでは、彼の朝食は在って無い様なものだ。

 現に、目を輝かせるチェルニーの横で、おいおいあんまり甘やかすなよ、自分の食い分も無くなるぞ、とワイリーがぼやいた気がしたが、とりあえず今静かにして欲しいエメットにしてみれば、両脇が大人しくなってくれて万々歳である。可哀想には思えど、山の掟は重々理解しているのが狩人というジョブなのだ。







 ところが、元気よく追加の注文をする闘士を優しく見守っていたベントンが、突然窓の外に目を移したまま動かなくなった。

「……?」

 ワイリーとエメットが、その視線の先を追うも、既にそこには彼が気になりそうなものは、何も無い。

「おい、どうした?」
「何もしネェ。」

 ワイリーが気にして声をかけるものの、反応も薄く、とっさに返したのであろう言葉も説得力が無い。
 エメットと顔を見合わせていると、オラちょっと・・・と席を立ってどこかへと立ち去った。食卓の上には先ほど注文した食事が運ばれてきたが、このままでは、ベントンの様子など全く気にする様子も見せないチェルニーが、全て平らげてしまう事は誰の目にも明らかだ。

「どうしたんだろうな?あいつ。」

 ワイリーの問いに、エメットが肩を竦める。












 と、ふいに、隣のテーブルで食事をとっていたらしい男達からどよめきが生じた。

(なんだ?)

 両手とテーブルを汚しながら、食べる事に無我夢中のチェルニーの横で、ワイリーは彼らの視線を追ってゆく。
 そしてその先に、

「すみません、仔馬亭という宿はこちらですか。」

 遠目にも分かる程には、良い生地が使われているのであろう、パブの光を柔らかく反射する、そのマントの“青”。同じ色の羽付帽子からも、クラン業界の人間には、その人物が青魔道士である事が分かる。
 その帽子の下に見える長い横髪をかき上げながら、亭主に訊ねる細いシルエットが映った。

 体と同じく細いラインを引く眉に長い睫を伴ったアーモンド型の瞳、よく通っていながら主張し過ぎない鼻筋。そしてそれらにヴェールを落とす様に流れる栗色の長い髪。


「ああ、そうだが。」
「そう、良かったぁ。高原の出だから、砂漠は慣れてないんだよね。マスター、何か冷たいもの貰える?・・・有り難う、これお代ね。それで聞きたいのだけれど・・・」


 声は無邪気で凛としていながら、不思議と落ち着いていて耳に心地良い。





 ―――なんだこの女、完璧じゃないか。


「何鼻の下伸ばしている、みっともない。」
「な・・・っ!」

 雑音が耳に入った、と思い勢い良くそちらをかえりみれば、エメットがしらけた目で頬杖をつき、ワイリーを見ていた。

「て、てめーこそ。」
「勘違いするな、お前のような見え見えな下心は無い。」
「へ、どーだかな。」

 言って、視線を戻すと何という事だろう―――その美女と目が合ってしまった。ワイリーが慌てて視線を逸らす前に、彼女は可愛らしく小首を傾げたかと思うと、空席を探しているのだろうか、パブの全体を見渡す様に眺めてから―――ワイリーに視線を戻した。にこっと微笑み、飲み物を持って、更にこちらへ歩み寄ってくる。

 その歩き方までもが、どこか洗練されており、クランの荒くれ者達が集まるパブの中では、かなり浮いて見えた。

 現に、酒を忘れて見とれる者や、すれ違いざま、横からヒュウ!と口笛を吹く者まで居る。そしてそれらを全く意に介さないで歩いてくる彼女は、そうした扱いを、もう当然のものとして受け取っているのだろう。

 それを横目で確認したエメットが、部屋に戻る、と端に座っていたワイリーを、まるで追いやる様に立たせ、席を外した。詰めて座らせてやれ、という事だがこの少年の場合、それが本心ではない。ただ、単純に女性と同席するのが苦手なのだ。
 実際、座らせるなら別のテーブルから椅子を一つ、拝借してくれば良いだけの話である。

(分かり易い奴・・・)

と思ったのは、

「あ、彼には悪いことしちゃったかな。」
「ああいや、気にしないでくれって。パブもこんなに混んでるし、あいつもあーいう奴だからさ。」

ワイリーだけではなかった様だ。
 女性に気を遣っているつもりで、逆に気を遣わせているエメットは、ワイリーから見れば紳士失格である。

 そう?席、譲って貰っちゃったみたいで悪いなぁ、と彼女は彼の消えた階段を見やっている。やはりエメットは、本人がそれをどれだけ上手く隠しているつもりかは分からないが、”分かり易い”らしい。

「じゃあ、隣・・・失礼するよ?」
「お、おう。」

 男二人とは座りにくいから、椅子を持ってくると言い出すかと思っていたのだが、彼女は大胆にもそのまま三人席の端―――まだワイリーの温もりが残っているであろう革の、薄いクッションの上に腰掛けた。 
 自然と、ワイリーはエメットの温もりの上に座る事になり、それは少年にとってあまり喜ばしい事とは思えなかったが、隣にこれだけの美人が座ってくれるなら、帳消しどころかエメット様々である。自然とにやけてくる顔を、取り繕うのに必死な位だ。





 彼女が席に着いたその瞬間、ふんわりと爽やかな花の香がワイリーの鼻を擽った。彼はそれが彼女のつけている香水なのだろうと、すぐに気付いた。

(これは確か・・・百合?)

 昔、母親の部屋にも香水瓶がいくつかあって、試しに嗅いだ事がある。
 元々興味も無かったので、高貴な家系の嗜みとして自分で付けろと言われた香りと、それ以外に二つ三つ程気に入ったもの以外は、名前との組み合わせを忘れてしまったが、百合の香りは、その数少ない記憶されたものの一つだった。
 家への反抗心はあったものの、元々服飾や流行には敏感な方だ。今でも、シリルの中心部まで出向く時は、それらの香水を少しばかりつけていく事があった。

 と、なれば…導き出される答えは一つだと、ワイリーは隣に怪しまれない程度に、その横顔を盗み見た。恐らく彼女は、お忍び旅行中の貴族か何かなのだろう。

 一方、それ程きつく香っている訳でもないのに、あからさまに鼻を擦ってしかめ面をしたのは、隣のチェルニーだ。どうやら鼻が敏感な上に、香水の匂いが好きではないらしい。
 その眉間に皺を寄せた顔のまま、女性に目をくれる事もなく、ひたすら料理を頬張っている。


(おいおいおいおい、こいつもかよ、ちょっとは隠せよ・・・エメットといい、馬鹿正直なやつらだな・・・)

 いくら初対面でも、いや、初対面だからこそ、同席になった人間にこんな反応をされては、誰も快くは思わないだろう。

「あんた、一人旅か?」

 彼女がきょとんとした様子で、チェルニーを見ている事にはっとして、急いでこちらに眼を向けさせる。
 女性に不快な思いをさせてはならない、という思いは、勿論ワイリー自身の軟派な性格から来るのもあるが、それ以上に、彼自身に自覚があったかどうかは別として―――過去に叩き込まれた騎士道精神から来るものがあった。



「ん?」

 ぱっちりとした二重の金の双眸がこちらを向く。
 心臓が跳ね上がるのを感じると同時に、珍しい瞳の色に驚く気持ちと、そこに怒りの色が浮かんでいなかったのに安堵する気持ちとが、一緒くたになって頭を駆け巡っていった。

 しかし・・・見れば彼女は自分達よりも少し歳が上に見える。今、目を合わせているこの状態でも、振り返った彼女の微笑みは「なんでしょう?」よりも、「どうしたの?坊や。」のそれに近い。
 相手が自分をどう見ているか察する能力の有無は、シーフにとって死活問題であるから、ワイリーにはすぐに分かってしまったのだ。

 つまり、彼女は歳上の許容さをもって、チェルニーや同席の自分を許しているとも言え、つまる所・・・この美女にとっては、自分はまだ頭に手を伸ばして撫で回す様な対象でしかない。

 その一瞬で出た結論だけで、何故かひどく疲れた様な気がして、ワイリーは大きなため息を、ひとつ。


「・・・そう、かな。今のところは。」
「今のところ?」
「近い内に、弟と合流するつもりなんだ。その前に、見つけなきゃいけない人も居るしね。」

 恋人か?と問えば、さぁ、どうだろうねと笑ってはぐらかされてしまった。

 ああ、その大人な笑顔は、背伸びしたい年頃の少年にはそれはそれは魅力的で、それでも決して自分では釣り合わないだろう、と一種の切ない憧れの様な想いを、ワイリーに抱かせる。
 が、そのワイリーの感情は、この場にエメットが居れば「またか」と突っ込ませたであろうレベルには、頻発するものであった。

 この時は、その諌め役が居ないせいで、どこまでも蕩けていく様に思われたシーフだが、

「おい、なんかこいつ、くせーからベントン呼んで来い。別の席行かせろ。」

意外な所から、

「…今、なんて。」
「お前、くせーんだよ。さっきから変な作ったよーな匂いふわふわさせやがって。」
「………?ああ、香りが気に食わなかったかな?御免ね、離れるよ。」

意外な流れで水を差され、言葉も出なくなった。

「おい、チェルニー!」

 そういやこいつ、上流階級嫌いだったな、と今更の様に思い出す。加えて、どんなに淡い上品な香りでも、野生児の闘士には鼻が利きすぎて悪臭そのものだったのだろう。さっさと食事を持たせて、エメットと一緒に上に上がらせるべきだったか…。

 ところが、ワイリーがそんな風に頭を痛めている横で、その女性はチェルニー自身に腹を立てた様子も無く、なんと離れると言っておきながら、笑顔で闘士の真向かいに席を移したのである。そして両肘を立て、指を広げて組んだ両手に軽く顎を乗せ、にこにこと微笑ましそうに、首を傾げて、チェルニーを―――

「…やらねーぞ。」

 ―――自分を眺めてくる事に警戒したのか、闘士は食べ物を掴んで汚した指を舐めながら、もう一方の腕で自分の皿を囲い込んだ。人の食べ物は喜んで奪っていく癖に、全く逞しい根性をしている。

「構わないよ、ただ美味しそうに食べるなぁと思って。どうぞ、お構いなく。」

 そんな態度を取られているにも関わらず、青魔はにこやかにそれを見守っているのである。


(あれ、もしかしてこの人そういうのが好み?え、嘘。)

 動揺しかけたワイリーだったが、次の一瞬で彼女が見せた表情は見逃さなかった。

「ところで、さっき言ってた人の事だけど…君達の仲間?」

 スイと目を細めて口元に浮かべた笑みは、さっきまでのそれとは、見る者が見れば、まるで違う。ほくそ笑んでいる、とでも言うのだろうか。ワイリーが寒気として受け取ったそれを、闘士も感じたのだろう、

「それが、どうした。」

手を止めてどうっと背もたれにふんぞり返る様に睨み付けている。
 
 そんなチェルニーが、異名の通りの獅子ならば、

「もしかしたら、古い付き合いの人かも知れないからさ。探してみたいから、どこに行ったか教えてくれないかな。」

それに臆する事無く、やんわり笑って接する青魔は、ヒタヒタと獲物に忍び寄る豹の様だ。先程見せた捕食者の様な影をもう引っ込めている辺り、相当色んな人物と、対話慣れしているのだろう。

(これは間違いなく本物の貴族だ。)



「おい、」
「……あ?」

 猛獣同士の張り合いに入っていける余地も無く、一人考え事をしていたワイリーは、突然のチェルニーの振りに、必死で頭を戻した。

「ベントンの奴、どこ行ったんだ。」
「さ、さぁ…どこに行くとも言ってなかったな、何かちょっと様子が変だったから具合でも悪かったんじゃねーか。」

「…そっか。」





 納得した様な声に、ワイリーはいぶかしみ、チェルニーは眉根を寄せて青魔を振り返る。
 顎に手を当てて何やら考え事をしていたらしい彼女は、ぱっと顔を上げ、有難う、探してみるよと席を立った。

「飲み物、ここに置かせておいて貰って良いかな?彼、この中に居るんでしょ?すぐ戻ってくるから。御免ね。」
「おい、ちょっと…!」

 それじゃあ、と去り行く青魔の背を追おうとしたワイリーを、おい、とチェルニーが呼び止めた。

「行かせてやれ。」

 置いておく必要もねーだろ、と言うその声は、この闘士が酷く虫の居所が悪い時のそれである。

「それより、お前早くベントン呼んで来い。これ食ったら相手になって貰いたいんだ。」

 言って横に立てかけてあったブレードを左腕に抱え込む。だが闘士自身の関心はまだ目前の食べ散らかした皿に向いているらしく、その言葉通り、そこから動く気は無いらしい。

「おま、自分で呼んで来いよ。」
「ワイリーの方が足が速いし、人探しも早いだろ。」
「…へいへい、お高い評価に感謝致しますよ、っと。」

 それでも、対人、対モンスター問わず戦闘になれば一番動いてくれるのは確かである、戦闘以外は自分の仕事ではないと割り切っているのだろう。
 まぁ、それはそれで確かな話ではある。

「そんじゃ、行ってくらぁ。ベントンあんまり調子良くなさそうだったし、今日は手加減すんだぞ。それと、報酬は手羽先一個な。」
「さーな。そいつは、殴り合いの“礼儀”に反するし、手羽先はほとんど俺の腹ン中だし、約束出来ねー。」
「あー、まーそうか…ってぇ、誰が出せと言った、誰が。新しく奢れって言ったんだよ。」
「金は全部モンブランに預けてあるから、食いたきゃあいつに言え。」

 やれやれ、といった様子で肩を竦め、人混みに消えたシーフを見送って、チェルニーは青魔が残したグラスを見やる。途端に、あの作った香りが蘇ってきて、思わず闘士は顔を顰め、鼻を擦った。
 本当にむずむずする、ベントンを探しに行くとか行っていたが、果たしてワイリーとあの青魔、どちらが早く奴を探して連れてくるのか。

「まぁ、あいつがキツそうなら今日でなくても良いしな。」

王族、貴族が嫌いな闘士にとって、その結果次第では、さっさと出かけてしまいたい所でもある。

(喧嘩でも買いに行くか、ここら辺の連中はまだ威勢良く吹っかけてくるのも多いし。)

残ったパンの最後の一口も勢い良く頬張って、闘士もついに席を立ち、

「お、獅子も出陣かい?こないだはどうもな、あんだけあっさりやられると、俺も清々しいよ。」

それを見ていた周囲の客が、元賞金首に向かってグラスを持ち上げた。
 ヤクト出身の大物賞金首が、何故かお咎め無しになって、今はクランでその腕を振るっているのも、たまにシリル界隈のライバルクランやチンピラの相手を一人でしてやっているのも、既にこの街では有名な話だ。

「今日はあんたに賭けさせてもらうぜぇ。何も分かっちゃいねぇこいつから、たっぷり召し上げてやんのよ。」

 大分酒が回っているその男は、横に居た仲間の肩をガッチリと掴んだ。
ちなみに、その客が目の周囲につけている青痣は、つい数日前チェルニーが彼の喧嘩を買ってやった結果である。

「そっか、ま、俺が負けるこたねーから好きなだけ稼げ。」
「おうおう、頼んだぜ!!」

 直接自分と殴り合いたい奴でなければ、後は自分を出汁に賭け事に励んでいようが、お好きにどうぞが獅子のスタンスだ。それに元より、自分より弱い人間が何していようが興味は無い。

 ただ、一つ心残りがあるとすれば…今目に映っている愛おしい存在を、自分の胃に収めず残していく事だろうか。

「おい。」
「あ、なんだい大将……」

 賭け事男と仲間達がヘラヘラとチェルニーを振り返って、ごくり、と唾を飲み込んだ。

「これ、」

 闘士は、テーブルの上を真っ直ぐに指差し、唸る様に声を絞り出している。

「ぜってーワイリー以外に食わせるなよ?食わせたら、」

 ―――てめーらを床ごと、ぶち抜くからな。
 その、気迫たるや。まさに牙を剥いた獅子の如し。

 戦士も術士も、は、はぃいいっと全員一致で返事をした後で、男達は互いに冷や汗の流れ落ちる顔を見合わせ、小声で話し合った。

「俺、ちょっとちびった…かも。なぁ、やっぱあいつにかけて良い?」
「ば、汚ぇなトイレ行って来い、後、お前の変更は無しだ無し!賭けにならねーだろ!」
「お前、賭けってのはもっと結果が見えないのを賭けるのが、賭けだろ!賭けろよ!!」
「おい、あんたら落ち着けって…」

 そんな男達の声を背に、尚も闘士は大皿の方を、暫く諦めがつかなさそうに見ていたが、やがてパブの外へと出て行って。

 結局、“彼”がベントンを連れて戻ってきた時、テーブルには、氷が解けきった飲みかけのグラスがひとつ、大皿に冷めてしまった手羽先がちょこんとひとつ、残されていただけであった。






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 ついに策士の章がやってきました。胡散臭そうなのにはワイリー以上に敏感なチェルニーさんです、匂う匂うと言っていたのは、物理的なものでしょうか、それとも、野生児の勘でしょうか。


 今回から、ページ送りのリンクを各話の終わりに設ける事にしてみました。考えたら、いちいち話タイトルまで戻るのも面倒だよなぁと(´▽`;)こちらの方が、人間工学的に合っている気がしますしね。
 それでも、もし前の方が読み易かった、というご意見があれば、メルフォやツイッターにてお寄せ下さい、色々検討してみたいと思います。

 後は、若干予定していたタイトルを変更した位でしょうか。若干、です。「誰が為に~」に続いていた言葉は、多分話の本質的には変わらないかな?

 それと、忍者さんが仕様変更されてから、フォントやら左揃え・中央揃えやらの指定があって無い様なものになり、前の様にしようとすると、かえってゴチャゴチャするというとんでも仕様になってしまったのです;
 具体的には、指定した所にタグが入ってなかったり、そこ要らんわって所にタグ入っていたり。そうなると最初からタグ弄った方が早いのですが、それだと手軽さを求めてブログにしている意味が無いのですよね…なので、今回から全部左揃えで行きたいと思います。タイトルが中央でなくとも、あまり支障無いですし。

 最初、この話の下書きを、忍者さんの記事に持ってきたら「字数多いぞバッキャロー!」と言われましたが、ワードファイルを軽いtxtファイルに変換したものの、字数修正は無しで押し通りました、HEY!!
























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ようこそ
人目のお客様。

ごゆるりと。
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