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夕暮れのカドアン。
人々が帰宅の途につく中、橙色に染まる町を忙しく歩き回っている人影が一つ。
「悪いが、うちの護衛は手が足りていてね。他を当たってくれんか。」
あまりにも呆気無く閉められた扉を見つめ、一呼吸おいて大きなため息を漏らしたのは、あのパラディンの青年だった。
これで八件目。
(やっぱりオラの言葉のせいかなァ。)
見れば、他の傭兵はすんなりOKを貰っている。それなのに、自分はこんな時分になっても、一件も雇い先が見つかっていない。
今日だけではない。この町に来てから五日もの間、ずっとこうして仕事を探している。そうこうする内に宿費も底をついた。後数件当たっても駄目だったなら、今夜から野宿決定だ。
「砂漠の夜は冷えがひでェって話ば聞いだけど・・・」
マントで体を包み込めば、少しは暖かいだろうか。
故郷を出てからというもの、こんな目にばかりあっている。正直、もう帰りたいと思った。麦畑と牧場が延々と広がっているあの町に。
---それでも、引けない理由が自分にはある。
青年は、青い手拭いを取り出した。ワイリーの服を綺麗にする時に使った、あのハンカチだ。
脳裏に、これを渡してくれた一人の若者の姿が浮かぶ。彼が、心の底から笑える日を迎える為にも。
---挫折する訳にはいかない。旅費を貯めて、さらに遠くへ。
「一刻も早く、故郷(くに)戻って皆に会いてェなぁ。」
「よう兄ちゃん。此処で何している?」
「・・・?!」
考え込んでいたせいで、全く気付かなかった。日が落ちて薄暗くなり始めた通りに、人影が4つ。目前にソルジャーとウォリアー、後方の建物の屋上に銃使い、そしてスナイパー。
完全に囲まれた。
全員種族は異なるものの、大人と言うにはまだ早そうだ。見たところ、十代前半の若者ばかり。皆、飢えているのだろうか。全体的に痩せていて、顔が汚れていたり服が破れていたりするが、目だけは異様に光っている。
全く、今日はついてない。その場に座って泣き出したい衝動に駆られた。
「おいおい、この状況で剣も抜かない騎士さんとは、とんだ腰抜けだぜ。」
「ま、好都合じゃない?財布の中身、置いて行って貰いましょ?」
「やっぱりモグはセンスが良いクポ。狙うならお上りさんが一番クポ~。」
改めて自覚したくはない事なのだが、周囲に誰も居ないのを見ると、やはり狙われているのは自分らしい。
「ちょ、ちょっと待つだよ。オラ今、あげられる金も無いだ。」
慌てて財布を広げて見せる青年騎士。確かにその中はスッカラカンで、相手は目を点にしている。どうやら、当てが外れた様だった。
「おい、騎士なら金持ちだって言ったのは何処のどいつだロルフ?」
「し、知らないクポ!モグもこんな貧乏な騎士初めて見ただよクポ!!・・・クポポ?!田舎言葉がうつったクポーっ!!」
「ごちゃごちゃ煩ぇんだよテメェらは。」
今まで黙って成り行きを見ていたウォリアーが、前に出てくる。
「金が無けりゃ、代わりの物を置いて行って貰えば良い話じゃねえか。」
そうか!!と、何処か抜けた反応をする仲間達と、まだ何もしていないのに半石化状態の騎士に、やれやれ、と首を振るバンガの少年。
「そうだなぁ・・・その腰に下がっている剣、寄越すなら見逃してやっても良いが。」
ハッとした。ウォリアーが指差したのは、先祖代々家に受け継がれてきた騎士剣、セクエンス。彼にとっては、パラディンとして独立した日に父から手渡されて以来ずっと、共に戦ってきた、無くてはならない半身。
「これだけは駄目だァ。他の装備なら何でもやっから・・・頼む、これだけは譲れねェ!」
哀願する騎士を見やり、スナイパーは銃使いを振り返る。
「って言ってるけど、どうするの?」
「丸裸にすれば、鎧や靴でも騎士剣くらいの金にはなるかも知れないクポー。」
これだから、お前らは甘いんだ、と首を振るバンガ。
「馬鹿言うな、こういうのはな。相手が一生懸命に守ろうとする物に一番価値があんだよ。」
という訳だ、と大剣を構えるウォリアーに、他の仲間も倣う。
「こっちも生きるか死ぬかの生活なんでな。言った通りにその剣を頂くぜ。悪く思うなよ。」
「・・・。」
彼らが大人や魔獣なら、迷う事無く突っ込んで行ける。
だが。
騎士は、已むを得んと剣にかけた手を、再び下ろしてしまった。自分は文無しで苦労しているが、彼らはもっと辛い思いをしている筈だ。話が通じない相手だと分かってはいても、刃を向ける気にはどうしてもなれない。
---傷付いてボロボロになった少年には---
「来ないなら、こっちから行くぜ!」
痺れを切らしたソルジャーが、先手を取って飛び出したその時だ。
ズサッ
鈍い音が地面から聞こえ、彼は思わず立ち止まった。
ほんの一歩先の土に、深々と突き刺さっている矢。
飛んで来た先を見れば、一人の狩人が、既に次の矢をつがえてこちらを狙っている。
「少しでも動いたら、次は腕に当てる。」
『・・・』
ハスキーな低い声が、その場を沈黙させた。
(あれは・・・)
騎士は彼に見覚えがあった。彼は確かさっきパブで・・・。
「クポポ!邪魔するなクポ!!」
自らを奮起させるかの様に、銃使いは叫ぶ。
銃声がした・・・が、狩人が倒れた気配が無い。と、突然矢が飛んで来た。そのまま、彼の被っていた帽子を後方へとさらう。
「ハメどられたクポ・・・」
「動くなと言った筈だ。」
まさに矢の様な即答。少年モーグリはその場にヘタリと座り込んでしまった。
「ほいほい、余所見中に、ワイリー様流、『武装解除』完了だぜ!」
「あ!この野郎、返せ!!」
一瞬の勝負に気を取られていたソルジャーは、背後から忍び寄ってきた影に気付かなかった。
油断するなよ?命取りだぜ、と笑うシーフの手には、先程まで彼が持っていた武器が。
「返せっておめー・・・今さっき自分達がやろうとしていた事、分かってんのか?追剥ぎだぜ?泥棒より悪いってーの。」
「盗賊に説教されたくないわよ!」
スナイパーが放った矢を、スレスレで回避するワイリー。さすがに連れの様な神業は使えない。
「ちょ、待てよ!俺達は交渉しに来たんだ。なぁ、エメット・・・おいこら、無視すんじゃねー!」
「交渉・・・だと?」
「ん?ああ、そうだ。」
我関せず、を装うエメットの方に拳を振り上げて怒鳴っていたワイリーは、ふと真顔に返る。
「とにかくさ、金が手に入れば良いんだろ?だったら、俺がこいつの代わりにやるから、ここは引いてくんないかな。」
顔を見合わせる少年ら。
「・・・いくらだ。」
「ざっとまぁ、手持ちにあるのはこんくらい。」
ほれ、とソルジャーの手に札束を押し付ける。
「リロイ、それだけあれば暫くお腹も満たせるクポ!」
リロイと呼ばれたソルジャーは、ワイリーを睨み付けながらも、半ば引っ手繰る様にそれを取ると、「帰るぞ!」と言って駆け去って行った。スナイパーと銃使いも、何やらアイコンタクトを取ると、笑顔で彼に続く。
「これで、一段落ついたろ?」
笑って騎士の方を振り返ったが・・・彼は蒼白な顔でこちらを見ている。いや、正確にはその後ろ---
「『油断は命取りだぜ』?消えて貰おう!!」
「っ?!」
ウォリアーの大剣が、ワイリーの頭上に振り上げられた。
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