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「あの馬鹿・・・っ!」
エメットは急いで矢をつがえるが、間に合わない。
------ジャッジは何故来ない?ああそうか、これはエンゲージじゃなくてただの追剥ぎだったな。はは、来る訳ねーか。すげー痛いんだろうな、ジャッジ居ない時に、剣で一刺しってさ・・・-------
「止めてけろーっ!!」
ガッ・・・
硬く重たい物同士が、ぶつかる音が響く。
(・・・。)
ありったけの覚悟をしているのに、何時まで経っても「その時」が来ない。ひょっとしてもう、雲の上に来てしまったのだろうか。
恐る恐る目を開いたワイリーが見たのは、雲などではなく、今までと変わらない地面。
そして、自分を覆う様に伸びている人影。
カチャカチャカチャカチャカチャ・・・
震える金属音が上から聞こえる。見上げると、ウォリアーの大剣が空中で停止していた。食い止めていたのは、装飾は無く質素なものの、銀の光沢が美しい騎士剣。
震える音は、その刃と刃の間に生じる、力のせめぎ合いによるものだったのだ。
「くっ、こいつ・・・っ!!」
両手で必死に押しているのに、全く剣が動かない。ウォリアーは汗だくだった。パラディンの額にも、汗が滲んでいる。
「この人は、オラを助けようとしてくれただ。絶対、傷付ける事なんねェだよ・・・お願ェだ、口止めのつもりなら、決して他言しねェから、こんな事止めてぐれ!オラ約束すっから!!」
騎士は、押し返す力を弛めないまま、真っ直ぐ自分の目を見ている。些細な差だが、それが出来るだけ相手の方に余裕があるという事。
「ちぃっ!」
少年は形勢不利と見て身を引くと、仲間が去った方へ逃げていった。
全く、悪い汗をかかせてくれる。事が済んだのを見て取ったエメットは、構えていた剛弓を背負い建物を飛び降りた。
「何だ、強ぇーじゃん。」
ホッとして肩の力を抜くと、今さっき助けたシーフが悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「襲われているトコに追い付いた時は、てっきりヘタレかと思ったぜ。」
だけどな、と彼は急に真剣になって付け足す。
「誰かを守ろうと思うんだったら、まず自分を守る事を考えろ。死んじまったら、誰一人庇えねえぞ。躊躇する暇あったら、迷わず剣を抜け。」
「・・・ンだな。」
「・・・?」
ワイリーとしては、ちょっとした注意のつもりだったのだが、騎士は俯いてしまって表情が分からない。
「ンだ、オラは前も、とっさの判断さし遅れて、大事な人守る事出来なンだ・・・。」
響き渡る子供の悲鳴。
駆け付けた自分が見たのは、主として慕い、弟の様に可愛がってきた少年が魔獣に引き裂かれる瞬間だった。
まだ幼かった騎士は、恐ろしさも忘れ、己の何倍も大きいその魔獣に掴み掛かった。その後ろでは、左肩を真っ赤に染めた少年が虚ろな目で彼を見ている・・・。
-------深手を負った少年だったが、命は取り留める。だが、その身は傷口から大量に入り込んだ魔獣の血に蝕まれていた。
お前は取り返しのつかない過ちを犯したのだと、父に殴られた。
父を恨みはしなかった、厳格で礼儀正しい聖騎士の父。自分が最も尊敬している人物。
彼の言う事に間違いは無い、騎士は貴族に------忠誠を誓った相手に傷を負わせてはいけない。例え、その手に握った盾が、自分の命になったとしても。
それなのに、自分は間に合わなかった、守り切れなかった・・・その重圧は、殴られた頬よりも痛む。
そこに飛び込んできたのは、上半身に包帯を巻いた痛々しい姿のままの彼。泣きながら自分の父に取りついていた。父の手が止まったのは、その必死の仲裁があったから。
「誓ったのに、二度と誰も傷つけさせねェって誓ったのに・・・」
「・・・おい」
言い過ぎただろうか、と不安になったきたワイリーがそっと呼びかけたが、青年の心は此処に無いようだった。
「庇われっぱなしで、何も出来ねェで。また醜態晒してしまった・・・オラは騎士失格だ。」
「んな事無ぇって!ほ、ほら俺だって無傷な訳だし、な?な?」
-------ベントンは悪くないよ-------
肩を掴んで揺さ振られ、顔を上げた騎士は息が詰まった。
心配そうに覗き込むワイリーに、あの日父から自分を庇おうとした、あどけない少年の悲しい顔が重なる。
今、彼は故郷だ。此処に居る筈はない。
騎士は苦笑して、誰に言うのでもなく大丈夫だと首を振った。そしてようやく顔を上げ、「怪我は無かっただか?」と問う。
「ほれ、傷どころか埃もついてねーぞ。」
クルクル回りながら無傷を主張するワイリー。妙に必死だ。
「何を踊っている、新しい芸か何かか?第一、お前の汚いマントじゃ、埃ついているかすら分からないだろうが。」
青筋を立て、瞬間的に動きを止めたワイリーを上から下まで眺めるエメット。本当に怪我が無いのを確認し、フゥッと息を吐く。
「とにかく、無事なら良い。」
お陰で猿が助かりました、と騎士に礼を言う狩人に、ワイリーが猿の如く反抗したのは言うまでもない。
「何だと!このムッツリ狩猟犬!!」
「いんや;助けられたのはオラの方ダよ。」
「誰がムッツリで、誰が犬だ!この馬鹿猿!!」
『・・・』
会話が成立しないので、三人とも同時に黙り込む。
「とにかくさ、全員上手くいったって事で良いじゃん。で、お前これからどうするんだ?」
騎士は返答に困って頬を掻く。
「今夜は、こごいらで寝るだ。」
「コゴイラ?ああ、”ここら辺”ね・・・ってお前な。」
なんつー生活してんだよ。
ワイリーは騎士のマントを引っ掴む。紫のホルスタイン柄になってしまった、あのマントだ。
そのまま、グングンと歩き出す。
「おい!」
「エメット吠えるな!俺は・・・たった今こいつをクランに勧誘する!!」
「はぁ?!」
「?!」
一方的で唐突な宣言に、返す言葉も無い二人。
「貴様どういうつもりだ!大体、お前の一存で決められる事じゃないだろうが。」
「モンブランには後で報告するさ。」
「俺が言いたいのは、そういう事じゃない。きちんと相手の都合も聞いてからにしろ。」
都合?ならついてるよな?とワイリー。騎士もエメット同様、彼の意図が読めずに困惑している。
「仕事と寝る場所探してんだろ?だったらクラン単位で動いた方が見つけやすい。それに、マーシュ帰っちまった今じゃ、うちにはモーニしか前衛居ないんだぜ?パラディン居ればエンゲージも楽だし。」
一挙両得~!俺って天才?!とはしゃぐシーフに、エメットはやれやれと騎士の方を向く。
「こいつはこう言ってますが・・・貴方はどうされたいですか?」
「ほ・・・」
騎士が震えている。ちょっと固まるシーフと狩人。
「本当に良いだか?!」
感動していただけらしい。びっくりさせんなよ、と呆れていたワイリーは、騎士が思い切り抱きついてきたので、再び驚く羽目に。
「かたじけねェ!オラ炊事以外だったら何でもするだ!!洗濯でも掃除でも何でもするだよ!」
「ちょ・・・苦じぃっ。」
あの・・・普通に騎士やってくれれば良いです、と突っ込みたいエメット。だが、野郎二人が抱き合っている場で言う勇気は無かった。
日が沈み、いくつか星が瞬き始めた空の下。
握手を交わす騎士と狩人。そして、シーフと騎士。
「よっしゃ!!んじゃ今日から仲間だ、宜しくな!」
シーフは相手の手を握り、笑顔で問うた。
------所でお前、名前何だっけ?
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”イラスト展示室”
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