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(3)← Ⅱ.眠れぬ獅子に捧ぐ祝宴(4) →(5)


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 ―――カドアンの宿屋前






「先程、少年らのプリズンへの移送を完了しました。以降面会したい場合は、スプロムプリズンで受け付けます。」




 その場に残った守護騎士がワイリー達に軽く会釈した。



 あの後、ワイリーとエメットは騎士達と共にヤクトを離れ、このカドアンまで戻ってきた。負傷したベントンは、騎士達の計らいでこの宿に運ばれ、今頃は白魔道士の治療を部屋で受けているだろう。ちまきには、白魔道士が居ない為、ワイリー達には嬉しい心配りだった。



「それでは、報酬の方を・・・」
「ああ、その話なんだけどな」



 おや、何でしょうと首を傾げた騎士に、ワイリーはピッと人差し指を立てた。




「受け取れねぇ。そちらが指定した人数の内一人、逃がしちまったからな。それに・・・」


 騎士が何か言う前にと、シーフは急いで続けた―――――――












「あれで良かったのか?」

 ワイリーが守護騎士と交渉している間、後ろで宿の外壁にもたれ、腕を組み待っていたエメットが、今はぼんやりと立っている彼を「部屋に戻るぞ」と手招きした。

 ワイリーが騎士に言った事は、騎士を、そしてエメットを驚かせたが、理由を聞く内に口の端がにやけるのを止められなくなった。

「良かねぇよ。俺はシーフだぜ?只働きとかチョコボに脳天砕かれるよりショックだけど・・・」

 宿の階段に突き当たった。ワイリーは最初の数段をトントンッと二段飛ばしで、後は普通に上りきると、後方のエメットが追い付くのを待ってから続けた。




「まだ、終わってないからな。」
「そうか。まぁ、お前はそういう奴だからな。思うようにやれば良い。」


 言った後で、エメットはワイリーがきょとんとした顔で自分を見ているのに気付いた。



「どうした?」
「優しい・・・何かあったのか?」


 途端にいつも通りの、不機嫌な表情に戻るエメット。

「ただし、こちらを巻き込んでくれるな。」


 先程のワイリーの交渉内容に感心していた等とは、口が何センチ裂けようと言わない男だ。






「ちぇ、結局そうかよ。」


 ガチャリと開けた戸の先では、ベントンが寝台の上に座り、ン・モゥ族の白魔道士と何やら話し込んでいる。その体には胸から腹まで包帯が巻かれていたが、顔色は負傷した時とは比べものにならない程良かった。


「よう、大分調子良さそうじゃねーか。」

 白魔道士は、ふわりと笑った。

「騎士様の回復力には驚かされましたよ。普通は丸一日白魔法かけても、ここまで元気にはなりませんから。」


 言って、ベントンへ振り向いた。

「少々骨にヒビが入っていた様ですが、そこは魔法で治療させて頂きました。後は外傷ですが、先程私がした様に、こちらの薬草を包帯巻き代える時に傷に当てて下さい。」


 その時よほど凍みたのだろうか、ベントンが複雑な顔で頷いたのに彼は苦笑した。


「全て魔法に頼ってしまうと、患者様の自己治癒能力が衰えてしまうんですよ。これに懲りたら、怪我をしないようにして下さい。最も、」

 やれやれ、という様に首を横に振る白魔道士。


「前衛の方って生傷が耐えなくて・・・我が騎士団の方達もそうですが、よく身が保つなぁって思いますよ。」











 明日には完治なさるでしょうが、一日は安静にしていて下さいね、と言い残して彼が去った後、ワイリーはボスッとベントンの寝台に飛び乗った。寝台自体は揺れたものの、さすがにワイリーよりも、ずっと大柄なベントンの体が浮き上がる事は無かった。


「おー!全然堪えてねぇ!」
「猿、仮にも怪我人のベッドに何してんだ。」

 窓際の椅子に腰掛け、弓の手入れを始めたエメットが注意したが、ワイリーは耳を貸さない。



「お陰さんで、調子も大分いぐなった。」

 ベントンはクシャリとワイリーの頭を撫でようとしたが、彼は「子供扱いすんじゃねー」とそれをかわして自分の寝台に飛び移った。

「いンや、すまねがったなァ。ついつい癖でやっちまっただ。」
「癖・・・?」
「故郷(くに)さ居た時にィ、近所の子供とよぐ遊んでだかラぁ。」
「・・・お前ってさ、パラディンにしては庶民的だよな。」
「ソゴなんだけどヨぉ、オラ父様にも注意さァされでェ・・・やっぱりいげネぇが?」



「・・・。」
「わイりー?」

 ふいに黙り込んだ為、ベントンが不思議そうに声をかけると、ワイリーは慌てて笑顔を作った。

「いや、良いと思うぞ?それも個性だしな!」

 手を止めたエメットが、チラッとワイリーの方を見たが、何も無かったかの様にすぐ作業に戻った。





「それとお前、俺はワイリーだ。わイ‘りー!’じゃねえ、語尾上げんなよ。ワが強いんだ、ワが。」
「こりゃ済まねガった、‘わ’イリー。」
「や、別にワだけ強調しなくても良いんだけどさぁー。」
「意識しねェと最後上がっちまうダよ。」




「・・・楽しく『盛り下がっている』所悪いんだが、そろそろ食べるか寝るかした方が良い。一人が怪我人で、一人が売られた喧嘩を買った奴ときたからな。」



 埃一つ無く払われ、弦をピンと張り直された大弓が灯りの中で美しい光沢を放っている。エメットはそれをそっと自分の寝台の横に立てかけ、上着だけ脱ぐと布団を整え始めた。


 疲れたから早めに休ませて貰う、と早々に寝る気でいる狩人の横で、ハッとした様子のワイリーとベントン。ワイリーは時計を見ながら、素直にそうだなと頷いた。




「じゃあ俺、下で夕食取ってくる。ベントンのは適当に選んできてやるよ・・・ベントン、どうした?」


 心配そうな、少し泣きそうな、そんな顔で自分の方を見ている青年にたじろぐワイリー。その声に、既に布団に潜り込んでいたエメットも、顔だけこちらに向けた。よくよく聞けば、ベントンが口の中でぶつぶつ何か呟いている。


「喧嘩はよくねぇ・・・喧嘩はよくねぇよ、喧嘩はよくねぇ・・・。」

 念仏の様に呟きながら小さく首を横に振っている。



 きょとんとした様子のワイリーがエメットを見ると、こちらも、珍しく何度も瞬きをしている。
 そんな少年たちの目が合った瞬間、その沈黙は笑いに変わった。


「おめーは俺のおふくろかよ!!」

 何故腹を抱えて笑われるのか分からないベントンが、答えを求めるかの様に横の寝台を見たが、そこに居た顔もふっと優しく笑ったかと思うと、スィと反対側を向いてしまった。



「・・・・・・。」
「心配ねぇよ、上手くやるって。」
「ンだけど・・・」
「大丈夫だって、怪我人が他人を心配出来る立場かよ。そんな暇があったら早く治る努力しろって。」


 何か元気の出る食いモンでもあったらかっさらってくるからよ、の一言にまた敏感に反応され、食事費込みで前払い済みだっつーの!と突っ込みを入れるはめになった。



「たく、どいつもこいつも俺を何だと・・・いや、いいや。言われることは分かっているから。」

 せめてこれ外していくか、と少年は頭に巻いていた緑の布を解いた。わざと無尽蔵にされている、各自好きな方向に跳ねている茶色の髪が覗く。



「どうしても・・・」
「ん?どうした。」

 また心配性発動かと、ワイリーが振り返る。暫く負傷した腹部を確かめる様に手を当てて考え込んでいたベントンだったが、その精悍な顔がスっと相手を捉えた。






(なるほど、このせいか。)


 どうやら相当の世話焼きらしい、このお人良しの青年だが、不思議と周囲にうっとおしいとは感じさせなかった。
 おそらく、与えて終わりの自己満足の愛情とか、そういったものではないからだろうとワイリーはどこか遠い心の中で思った。騎士の目は、誰に対しても常に対等で、真っ直ぐだ。





「どうしても、あノ闘士と真ン前から戦いてェって言うなら、まズ殴られねぇ事ダ。膝だけでこの威力ダぁ、力さ入れやすい手の攻撃じゃア、一溜まりもねぇ。」



 騎士は両手を武器や相手、ワイリーに見立て、この場合はこう動くとよい、という戦術を語り始める。あの戦況下でそこまで相手を見ていたのか、と少年は呆気に取られた。

 

「あの闘士は確かに速ぇ。ンだけど、それは素手での話ダ、両手武器を片手で持デるって言ってモ、その重さの分、お前さんの方が速く動けるはずだべ・・・だけんど、素手の時さ気ィつけてくれ、反撃する隙が掴めねぇ時は無理しないで交わし続けた方がよがス。」

「だけど、それじゃ勝てないんじゃ・・・」

 ワイリーの言葉に、静かに首を振るベントン。微かに微笑んでいる。





「力の籠もった攻撃ってナぁ、剣でも魔法でも体力の消耗さ激しいもんダす。」




 ―――――だから、無茶をしてくる相手に無茶はせずに、勝機を待て








 ベントンの言葉が言い終わるのを待っていたかの様に、ワイリーの腹が低く唸った。



「あ、悪ぃ。」
「いんや、オラこそ長く引き留めちまって・・・」


「いや・・・・・・すげー参考になった。どうすればいいか、ちょっと見えてきたかもしれない・・・・・・んじゃ、ちょくら行ってくる。」



 
 出際の、お前、戦術の話になるとあんまり訛らないんだな!!という一言に騎士がどんなに複雑な顔をしたか、勢いよく飛び出して行ったワイリーも、その横で静かな寝息を立てていたエメットも知らなかった。




 

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 後書き
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